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実験者にとって使いやすい飼育ケージを求めて

株式会社 アニメック 富田久志

(日本実験動物学会ニュース 平成18年5月11日発行より転載)

私がアメリカ実験動物学会(AALAS)に出席したのは昨年の第56回セントルイス(ミズーリ州)大会で10回になりました。すなわち初めて出席したのは1996年の第47回ミネアポリス(ミネソタ州)大会でした。その後、毎年出席してまいりました。第48回大会がアナハイム(カリフォルニア州)、第49回大会がシンシナティ(オハイオ州)、第50回大会がインディアナポリス(インディアナ州)、第51回大会がサンディエゴ(カリフォルニア州)、第52回大会がボルチモア(メリーランド州)、第53回大会がサンアントニオ(テキサス州)、第54回大会がシアトル(ワシントン州)、第55回大会がタンパ(フロリダ州)でした。おかげさまでアメリカの各地を旅行することができました。しかし、まだまだ行ったことのない州がたくさんあります。今年の第57回大会はソルトレイクシティ(ユタ州)で開催されます。もちろん出席します。

初めてAALASに出席したときは一度は参加してみたい、何か面白いケージはないだろうかという軽い気持ちでした。しかし参加してみて驚きました。まずその規模の大きさに驚きました。展示会場は1日ではとても回りきれません。見るもの聞くものが新しくすごく興奮したのを覚えています。次に感じたのは実験動物の飼育というものに関して日本は遅れているということです。遅れているという言葉よりも日本は保守的だといった方がよいでしょうか。とにかくその格差に驚きました。最後に思いましたのは1回こっきりでは駄目であるということでした。毎年来ようと決心しました。

私は長年、飼育器材の仕事をしてきました。AALASに出席する目的はまずは実験者にとって使い安いケージを探すことでした。ところが、いわゆるオープンケージラックというものが展示場では見あたりません。ないわけではありませんが探すのに苦労しました。隅の方にありました。展示会場入り口の特等スペースを占めているのは大手の個別換気ケージ(Individually Ventilated Caging System、IVCと略す)のメーカーでした。一口にIVCといってもいろいろな方式があります。各メーカーは自社製品が最高であると言っています。ところが毎年AALASに出席してきますと、昨年、当社の製品が最高であると言っていたのに、もう改良が行われて新製品が出ています。他社のよいところはすぐに取り入れてきます。さて、最後に勝利するのはどこのメーカーでしょうか。それはユーザーが決めることです。

AALASに出席するついでにNIH(National Institutes of Health、国立衛生研究所)の動物施設も見学するようになりました。最初に見学したのは1958年のインディアナポリス大会の後でした。見学したのはNIHの中のNEI(National Eye Institute)でした。NIHというのは単一の研究所ではなく、多くの専門研究所が集まったいわゆるコンプレックスです。NEIで使われていたIVCは直接給気・間接排気方式といわれるものです。ケージの中にHEPAフィルター浄化空気を直接送り込み、排気はケージトップのフィルターを通してケージの上にあるキャノピー(天蓋)を介して行います。見学して驚いたのは入退室が非常に簡単なことでした。革靴の上にディスポーザブルのカバーを掛け、ディスポーザブルの白衣をはおり、ディスポーザブルの帽子をかぶっただけでした。エアーシャワーなどありません。飼育技術者や実験者は手袋とマスクをしていましたが、動物に触らなければこれらは必要ないということでした。簡単に入退室ができるということは実験者にとって非常に使いやすいことになります。それは1つ1つのケージが個別に換気されて隔離されているから可能なわけです。

NEIを見学してもう1つ発見したことは、自動給水装置を使っていないことでした。IVCには自動給水装置が標準装備されている機種が多いのですが、ここでは使っていませんでした。すべて給水ボトル方式でした。自動給水にするか給水ボトルにするかはユーザーがお決めになることですが、給水ボトルを使うならもっと交換しやすい方法があってもよいのではないかという感想を持ちました。

次にNIHを訪問したのは同時多発テロのあった2001年の10月19日でした。テロは9月11日でしたから約1ヶ月後でした。ワシントンDC直行便で行きましたが機内はがらがらでした。訪問したのは新設のNAIDI(National Allergy and Infectious Diseases Institute)。まだ動物が導入される前であったので写真撮影が許されました。動物がいる、いないというより、カメラに飼育技術者や実験者の顔が写るのをおそれているようでした。ここでは室ごとに異なるIVCが配備されていました。AALASで展示されていたすべての機種が揃っていました。比較検討する目的があると聞きました。ここで初めて排気を天井の排気口から行っているのを見ました。IVCは基本的には室内の空気をHEPAフィルター浄化してケージに給気し、排気もHEPAフィルター浄化して室内に戻しますが、ここでは建物の排気設備に直接つなげていました。感染症の研究所なので空気はもちろんすべてのものが滅菌されてから外に出ます。

同じ日に、もう1カ所訪問しました。そこはNCI(National Cancer Institute)でした。ここで使われていたIVCは間接給気・間接排気方式のものでした。すなわちケージトップの給気用フィルターを介してケージ内に給気し、同じくケージトップの排気用フィルターから排気します。ケージ内に直接給気しません。ここでは給・排気ブロアーがラックのトップではなくラックの下、床の上に置かれていました。給・排気ブロアーがラックのトップに置かれているとその振動や騒音がケージに伝わってよくないということでした。ラックと給・排気ブロアーを切離せばもっとよいのではないかと思いました。

その後、2002年、2003年そして2004年とつづけてNIHを見学しました。2004年に訪問したのは新設のThe John Edward Porter Neuroscience Research Centerでした。ここはInstituteとはいわずCenterでした。共同利用施設のようなところです。動物施設は既存の35号棟、36号棟および37号棟の地下をぶち抜いた巨大なものでした。ここでインストールされたIVCは1社のものに統一されていました。直接給気・直接排気方式と呼ばれるもので、給・排気ユニットはラックとはセパレートされています。検疫室にも同じIVCが配備されていました。陰圧運転もできるからとのことでした。この IVC を選んだ理由をお聞きしました。

1)音が静かであること
2)振動がケージに伝わらないこと、
3)ケージをラックから取り出さずに給水ビンの交換ができること
4)ケージ内を陽圧または陰圧に切り替えることができること

ということでした。私はこの機種の特徴はこのほかに動物に対するエアの流れが非常にやさしいことがあると思っています。

昨年はNIH訪問をお休みしましたが、今年は新築の病院の地下にできた新しい動物施設を見学させていただくことになっています。今から楽しみです。以上

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