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(株)アニメック 富田久志
2010年11月号アニテックス投稿記事より
アニテックス2010年11月号

ザ・ガイド 2010 は訴える

ザ・ガイド(Guide for the Care and Use of the Laboratory Animals)第8版2010が発行されました。1996 年以来の改訂です。その中でとりわけ大きく取り上げられているのが環境エンリッチメントです。旧版でも環境エンリッチメントという言葉はあちこちにちりば められていましたが、今回は独立した「環境エンリッチメント(Environmental Enrichment」という項目ができています。環境エンリッチメントについて約2ページにわたって詳述されています。「環境エンリッチメントの第1の 目的は動物福祉を高めることである。」と書き始められ、「適切な環境エンリッチメントは動物の不安とストレスを緩和するので、実験の感受性を高め、そして実験動物の数を削減することになる。」と結んでいます。ここに至る道のりを私なりにまとめてみました。

環境エンリッチメントとの出会い

さて、私が実験動物用エンリッチメントディバイスに興味をもったのは、1997年アメリカ実験動物学会(AALAS)に参加したときです。開催地はカリフォルニア州アナハイムでした。学会展示のなかでエンリッチメントディバイスを見つけたのがはじまりでした。製品の種類はいまのように沢山はありませんでした。ペットショップでよく見かける商品のようにも思えました。アメリカに行くときにチャンスがあれば大学や公的施設、製薬会社などの動物施設を見学しました。ほとんどの施設でケージ内に1個ないし複数の環境エンリッチメントディバイスが入れられていたことには驚かされました。
資料やサンプルをアメリカから持ち帰って国内のお客様に説明してもなかなか理解を得られませんでした。エンリッチメントディバイスを入れてどのような効果がありますか?食べてしまってもデータに影響はありませんか?おカネと手間がかかるでは?さまざまな意見をいただきました。欧米で理解されているものでも、日本国内に広めることは容易ではないことを痛感いたしました。

床敷き飼いと金網ケージ

最近、薬理実験などの動物飼育には床敷飼いケージが多く使われています。これは動物に対して環境エンリッチメントが施されるからです。その他のメリットも数多く考えられます。しかし、毒性試験の飼育環境では、依然として金網ケージが使われているケースがほとんどです。これは日本だけに限らず欧米でも同じようです。 ボトム型ケージを使用できない理由として、動物がケージ内の床敷や糞を食したりするため、データに影響を及ぼす恐れが大きいためだと考えられます。そういう理由で金網ケージを使い続けることは動物の環境エンリッチメントに対して進歩がないと思います。欧米ではげっ歯類の飼育実験に対して専用玩具や、隠れる行動を助ける材料が多く販売されていて、それらを使用することで動物の精神的な面を安定させることが多く発表されております。
毒性試験に使われる金網ケージ内に、齧ってもデータに影響を及ぼさない材質の玩具や巣を造る材料などを入れてやることができれば、現状よりも改善されるのではないでしょうか?もちろんこのことにより飼育管理に手間がかかり過ぎるかもしれませんが、もとより動物実験は時間とお金がかかるものです。世間がこれだけ裕福になった今日この頃、動物にももう少し良い思いをさせてあげたらいかがでしょうか?

2001年10月NIH見学

2001 年 10 月にアメリカ国立衛生研究所(NIH)の動物施設を見学しました。そのとき、以下の所感を持ちました。従来からサル類やイヌについて環境エンリッチメントが叫ばれていました、アメリカではマウスやラットについても実用の段階に入っています。とくに小動物の環境エンリッチメントの資料をまとめてみました。 床敷き飼いケージ内に円筒形でまるでトイレットペーパーの芯のような物が入れてあり、その筒の中を楽しそうにマウスが走り抜けていました。なかには中に隠れているマウスもいて動物実験中とは思えないような光景を見ることができました。何も入れていないケージで飼育しているマウスと比べ落ち着きがあるようにも思えました。 ケージ内にもう一つ変わった物が入っておりました。5cm四方の紙片で厚さが6~7mmの圧縮した物でした。ハードチップなどを使用する場合、特に効果がある代物だそうです。コーンや木片チップを使用したいが巣造りがとお悩みの方にぜひお勧めします。マウスは噛み砕いた紙片できれいなサークルを造りその中で気持ちよさそうにしていました。噛み砕く材料、巣造りの材料があることはマウスに対するエンリッチメントに役立つのではないかと思いました。



採算がとれないエンリッチメントディバイス販売

当初、国内でエンリッチメントの商材を気ながに販売するか止めるか少し迷いましたが、現在まで取り扱いを続けてきて本当に良かったと思います。2005年~2007年頃、サンプルとして1~2個の注文が多く、輸入費用がまかなえないような状況でした。なかにはサンプルで数個試してみたいというお客さまもいて大変でした。3年前くらいからようやく数十個単位での受注ができるようになりました。単価が千円前後のものが多く、会社を支える商品などとはほど遠いものです。欧米の考え方や製品の導入などが日本の飼育環境をレベルアップすることになるのではないでしょうか?



玩具を与えるだけが環境エンリッチメントではない。

ケージの中に玩具を入れ動物を退屈させないだけが環境エンリッチメントではないと思います。動物室内環境(温度、湿度、照明、換気、騒音、ケージの配置)などが対象動物に適合していることが大切ではないでしょうか?また、研究者や飼育担当者は動物とフレンドリーでなければならないと思っております。相手は喋りませんが声をかけてあげたりすることも良いことではないでしょうか?実験用ミニブタなどは子供のころからスキンシップやペットのような接し方をすることにより手技が簡単になるケースが多いといわれております。人も動物も長期間の独房生活は精神的苦痛を多く感じるでしょう。複数で居られること、もしくは隣とのアクセスができるなどは大切なことです。施設の設計やケージ作りに生かしていくべきではないでしょうか?

主軸商品

売れ筋商品のご紹介をします。げっ歯類では圧倒的にマウスイグルー、ファースト・トラックでトンネルやマウスハット、マウスコーナーハット、ラット用クロウボールも多く出荷しております。マウス・イグルーはマウス用エンリッチメント・ディバイスのなかでは手ごろなディバイスで、つみ重ねができオートクレーブ滅菌が可能です。滅菌により再使用ができ経済的です。ファースト・トラックはイグルーの上にセットできます。セットでご購入されるお客様も少なくありません。マウストンネル、ラット・トンネルなども好評です。ペーパー型シェルターとしてマウス・ハット、マウス・コーナーハットなどもございます。
Animec Enrichment Devices
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イヌ用ディバイスではコング、ダンベル、ボール類、噛む商品などが主流です。なかでもコング、ダンベルは多く出荷しております。
霊長類で多くお使いいただいている製品はコング、コングブルー、モンキーミラー、ダンベルなどです。

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この機会に皆様方の施設でもぜひ環境エンリッチメントについてご検討いただければ幸いです。下記はエンリッチメントの評価方法です。色々な評価方法がございますが一押しとして抜粋させていただきました。

環境エンリッチメントの評価方法(京都大学霊長類研究所HPより)

生理学的方法:血液を採取し、ストレスに関連するホルモンの変動を測定するなど
生物学的方法:動物の怪我や病気の頻度を調べるなど
獣医学的方法:発育の程度、繁殖成功率を指標とするなど
行動学的方法:異常行動の頻度や1日の行動の内容を調べるなど

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