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実験室の中に野生を持ち込む:エンリッチメントのジレンマ


Bringing the Wild Inside the Lab: The Enrichment Dilemma
ALN WORLD Volume 4, Number 3, 2011

最近の研究によればエンリッチメントが動物実験の結果を改善することが示されている。しかし、エンリッチメントは実験を費用がかさむものにし労働集約的なものにする。どれほどのエンリッチメントを施せば十分であろうか?

動物界におけるあらゆる種は食物連鎖における場に結びついた生来の行動パターンを賦与されている。そしてあらゆる生物はまさに自然の力によって駆り立てられてそれらの行動パターンを表現する。これは論ずるまでもない。しかし、実験動物に種特異的な行動をとらせる機会はいくつかの理由のためにジレンマとなっている。

自然の行動を抑圧すると、その種にかかわりなく、不安とストレスをもたらす。これはその動物にとって悲しくて気の毒な状態であり、実験結果に影響を及ぼす。しかしながら、実験室の中に野生を持ち込むことは財政的にあるいはロジスティックに実際的でないと思われてきた。そして、動物相にまたがる生まれつきの行動の概念を認めている人々の中には-まだ人類だけが感覚力があると信じているが-余計な費用は必要でないと決めつけている人たちがいる。

また、生まれつきの行動を十分に表現させる環境のためのスペシフィケーションとはどういうものかは一般に同意されていない。したがって、そのような環境-エンリッチされた環境-について語る人々は非常に異なる業務を思い描いている場合が多い。神経科学の分野においては、その目的が学習と記憶の能力を高めるためにできるだけ脳を刺激することであるので、エンリッチメントは極端に刺激的な環境を作るために行われる。動物の幸福の点から、エンリッチメント(おそらくここでは、どちらかというと苦痛の軽減として特徴づけられがちである)は、動物の苦しみを最小限にして、できるだけ最善のデータを取得するために、動物の種特異的な基本的ニーズとそれを表現するための機会を与えるために行われる。これは動物実験の業務における供試動物数の削減と苦痛の軽減の目的と矛盾しない。そして、動物と研究の最終目的のためにエンリッチメントを適合させることを求めている。さらに、おそらく動物福祉活動家のための緩和策として広く公表されているエンリッチメントの概念のおかげで、ある方面では、エンリッチメントは、あたかもエンリッチメントが標準ケージに加えられるなにかであるかのように、ノベルティとファッションについた古錆と思われてきた。

研究者と研究所を考えるとき、自然の行動を行わせることの実験結果に及ぼす潜在的ベネフィットとそうすることの時間、エネルギーおよび費用におけるコストとの間のトレードオフを計算する問題が存在する。そして、期待、見通しおよび行動における、変化を処理する困難な問題が存在する。出だしの失敗(フライイング)や産みの苦しみがいっぱいで、このような変化は個人および組織にとって進取的傾向がなく困難であり、既得権益の中で人をいらいらさせるであろう。

予防としてのエンリッチメント

最近のある顕著な癌研究はこの変化の問題にスポットライトを当てた。

ニュージーランドのオークランド大学にある分子病態病理学講座の教授であるMatthew J. Duringは神経科学と遺伝子治療プログラムを統括しており、共同研究者たちはエンリッチされた環境においてマウスは癌にかかりにくいことを証明した。
とくに彼はエンリッチされた環境はメラノーマと大腸癌の緩解と阻害を起こし、また運動だけではこの結果をもたらさないことを発見した。Dr Duringはエンリッチメントをダイナミックな社会的交互作用、新規な物体への暴露および肉体的活動の高進をもたらす感覚性の、認知性の、運動性の、そして社会性の刺激を持つ複雑な住環境と定義づけた。彼はこのような住環境は中枢神経>系、内分泌系および免疫系の間の相互作用に影響を及ぼすと言っている。

ここにその研究と所見を再現する。研究者たちは3週齢のC57BL/6マウスを環境エンリッチメントした住環境に無作為に配分した。各住環境に18-20匹のマウス、または1ケージあたり5匹の対照群であった。マウスは決められた住環境に3週

間または6週間生活し、その後に研究者たちはすべてのマウスにメラノーマ細胞を注射した。17日から19日の経過後に研究者たちは腫瘍サイズを測定した。

エンリッチされた住居に収容されたマウスのうち、エンリッチされた住環境に実験開始3週間前から住んでいたマウスでは対照の住環境にいたマウスと比べて腫瘍の平均容積が43%小さく、6週間前から住んでいたマウスでは77.2%小さかった。対照群のすべてのマウスは目に見える固形腫瘍を発現したが、3週群のマウスの5%および6週群のマウスの17%には見える固形腫瘍がなかった。エンリッチメント群では腫瘍の発育が遅く遅れて発現した。そして実験が終了した19日後にはエンリッチされた住環境にいたマウスの15%には目に見える腫瘍は存在しなかった。

Dr Duringと彼の共同研究者たちはエンリッチされた住環境の癌の緩解と抑制に及ぼす影響を1500匹のマウスを用いて5年間にわたり調査した。彼らはメラノーマと大腸癌の両方を注射したこれらの結果を再現し、住環境供給における個々の変数が及ぼすインパクトを系統的にテストした。これは環境が予防メカニズムを惹起する可能性を示す説得力のある例であり、可能なときにはいつでもその種に特異的なエンリッチされた住環境を採用することを求める説得力のある議論である。それは標準ケージで飼育したデータの有用性に疑問を呈する可能性がある。

どれほどのエンリッチメントが必要か?

このジレンマのより単純で。より当面の見地に戻ってみると、どれほどのエンリッチメントがあれば十分かということに関する会話が行われている。結果的には、これはそれ自体が進行中の研究の領域である。科学者たちは種に特異的な行動の行動目録をますます詳細に作り上げている。そしてそれらを活動、行動および機能によって切り分けている。これらのカテゴリーは個体の行動対社会的行動および支配対なわばり意識のようなより慎重な分類を示唆している。したがってエンリッチメントの問題は1つの答えではない。実際にそれは環境の設計と実験の設計の両方を実験動物に関する深い知識に基礎を置く問題であろう。

公開されている多くの疑問のうちの一つは1940年代以降興味を持たれてきた。1940年代にはカナダの心理学者Donald Hebbはラットを自分の家に持ち帰り、後にケージから離れて時を過ごしたラットの行動が改善されていることを観察した:複雑な構造化された環境は結果の標準化とその結果として再現性に影響するのだろうか?

図1.我々の結果は動物は我々が提供したエンリッチメント・アイテムをすぐに使用したことを示している

エビデンスによれば環境を苦痛のないものにすることによって福祉を改善しても標準化を妨げないことが示唆されている。ある研究において、我々は異なる動物ユニットでラットとマウスに2つの標準的なエンリッチメント・アイテム(シェルター、巣作り材)を実施した。我々は動物管理スタッフに動物によるエンリッチメント・アイテムの使用を毎日のスコア・シート・システムによってモニタリングするように指示した。動物スタッフの標準化されたエンリッチメント・プラグラムの実用性に関する観点を毎月のスコア・シート調査によって評価した。また、我々はエンリッチされた環境が繁殖成績に影響を及ぼすかどうか、いくつかの最近の研究からの実験データのばらつきを増加させるかどうかを評価した。我々の結果は動物は我々が提供したエンリッチメント・アイテムをすぐに使用したことを示している(図1)。繁殖成績および実験データにおけるばらつきは以前の住環境および/またはエンリッチされていない住環境から得られたデータと比較して差はなかった。全体的に、結果から種に適した標準的な環境エンリッチメントは実験成績および動物管理スタッフの日常作業に望ましくない副作用を及ぼすことなく動物の福祉を改善することが示された。これは試験に創造力に富む領域を残している。

もちろん、考えなければならないことと、しなければならないことは他にも沢山ある。文献を綿密に調べてみると、多くの環境エンリッチメントは動物の家庭生活に焦点を置いていることがわかる。すなわち、家庭的な臭いと子育て、および日々の行動レパートリーであり、これらは社会の形成、隠遁、食事、休憩、巣作り、縄張り、探餌、囓るおよび退屈しのぎから成っている。しかし、種が進化した世界の何が、光と色の世界、音と臭いの世界、種内コミュニケーションの世界、季節の変化、地球、花および風の音の世界か?視覚刺激、聴覚刺激および動物が内心から行動し反応したくなることに決定的に影響を及ぼすもっと大きな世界の嗅覚刺激などを剥奪することのインパクトは何か?

それにもかかわらず、直感性の異なる定義は横に置いておくとして(忘れたわけではないけれども)、最近の研究は動物の実験室内住環境をエンリッチすることによって自然の行動を表現させるようにすると動物と研究者にベネフィットをもたらし、動物はよりハッピーであるように見え、より正常な動物から得られるデータはより信頼性が高まることが示唆されている。さらに、バイオメディカルの実験現場においては、研究者たちはエンリッチされた住環境は迅速で良質の結果を得るためのツールであることを発見しつつある。

したがって、我々はさらに3つの試験を報告しようと思う。1つの報告では生まれつきの行動は実験室内で生まれた世代内でさえも持続するという。別の報告では社会的生活はパーキンソン病に打ち勝つという。第3の報告は完全に自然な生息環境、表土などはすべて大脳皮質の可塑性を何十倍も改善することを証明している。そして、我々はエンリッチメント・ツールキットに音楽と色彩を加えることに関するいくつかの新規の試験を記しておきたい。その後はあなたの番です。我々は全バイオメディカル社会がこの重要で困難な問題に取り組んでいるので会話と質問を鼓舞したい。

 

野生状態に帰る

ラットのひげのわずか1つを臨界時間帯内に刺激すると1動作を脱線させ、攻撃されたサイトから血液を洗い去る血管は血液の安全な通路を確保するために拡張する。人の指と唇を刺激すると、同じバイオセーフティ・システムを始動させる。動物の体は数百万年にもわたり生存するように微調整されて進化してきたことは疑いもない。そのとおり、それぞれの種は明白な生まれつきの行動パターンを持っているが、基本的な第一原則が存在し、すべては微妙で、巧みに慎重でありそして目的のために絶妙にフィットしている。

ここに説得力のあるエビデンスがある。彼の入賞した映画The Laboratory Rat: A Natural Historyの中でオックスフォード大学の動物学者Dr Manuel Berdoyは実験室内で生まれて育成されたラットの世代がたちどころに自然の行動に戻ることを証明している。彼のウエブサイト www.ratlife.orgでBerdoy は映画を作るためのこれらの理由を述べている。

1.動物を監禁状態で飼育するとき、彼らが何をするために進化してきたかを知ることが重要である。動物福祉における進歩は、かなりの程度まで、知ること、進んですること、および事実のコンビネーションによって駆り立てられている。この映画は行動とニーズの範囲を再吟味することによって、これら3つすべてを関連づけることを目的にしている。行動とニーズは、世代と馴化とに関わらず、自然のままであり、機会を与えられたときにはすぐに表現されるものである。

2.科学的理由からも関連がある。もっぱらメカニズムに関心を持っている最も普通の科学者でも、ある意味では、進化の産物を試験している。実際に、進化の数百万年はラットを地球上で最も成功した社会的雑食動物の1種にした。称賛に値する種(および非常によいペット)はラットにとって何が重要かというガイドが動物の行動(ある程度まで我々自身の行動を含む)および福祉における中心的問題のガイド付きツアーとなるというその能力の範囲である。

“数ヶ月にわたる野生生活のドキュメンタリーとしてのショット。この27分の映画は大きなアウトドア・エンクロージャーに放たれた飼い慣らされたラットの生活を追っている。そのエンクロージャーではラットたちは野生の仲間と同じように餌、シェルター、およびつがいの相手を求めて競い合わなければならない。”。とDr Berdoyは彼のウエブサイトに書いている。

この野生環境においてまもなく盛んになる複雑で構造化された社会の出現に気づくとき、映画は生理学から心理学まで及ぶ試験がどのようにし

て、世代にわたる馴化にもかかわらず、機会が与えられたときにすぐに表現される数多くの特質を明らかにしたかを見せている。我々はラットを野生から連れ出すことはできるが、はたしてラットから野生を取り出すことができるだろうか?

この研究および他の研究は環境における特徴と動物の持って生まれた行動パターンの表現との間の必要な関係を確認している。そしてDr Berdoyは注目せざるをえないような原理を例証するのを手伝っている:システムがバランスとハーモニーで動けば動くほど、動物が受けるストレスは少なくなり、あなたは、組織学、神経学、内分泌学、および行動学のような領域において、実験結果の有用性にますます確信を持てるようになる。

世界中の科学者たちによってなされた長年にわたる献身と研究のおかげで、我々はげっ歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、サル類、および鳥類など一般的に用いられている実験動物のニーズについての知識の豊富な基礎を持っている。そして我々は標準的なラック式ケージが脳の機能に変化を及ぼしげっ歯類が神経科学の研究に役に立たないことを知っている。我々は住環境を洗練することによって動物実験施設における重要なニーズのいくつかを提供できることが確立されている。生まれつき持っている行動が長年使用していないにもかかわらず持続するというエビデンスは動物のニーズ-生理学的な、社会的な、そして感情の-に注意を払うことは動物を保護し、そして苦痛を軽減することに役立つという一般的な仮説を支持するものである。

 

病気の予防

ここにいくつかのごく最近の所見を紹介しておきたい。これらの所見は、もし反復されれば、苦痛の少ない環境と、病気を手術あるは薬物療法を行わずに予防しあるいは発症を遅延させ、および治療することとの間の直接的関係が証明されるであろう。

Charlie Meshul と研究アシスタントのNatalie Goldbergの二人はVeterans Hospital とOregon Health and Science Universityにおいてエンリッチされた環境がパーキンソン病を発症させた動物に及ぼす影響をテストした(図2)。このマウス社会において3週後に、若齢マウスと老齢マウスの両方が標準ケージで飼育された対照群と比べて神経細胞がそれぞれ53% と52%修復していた。

神経細胞のこの新しい修復は両群においてつかまらずに立つことと関係しており、老齢マウスにおいて躓きが減少した。パーキンソン病にかかった動物は後ろ足で立つときの75%もシリンダー壁を使用するが、健康な動物はその時間の一般的に約50%に壁を使用する。回復中の動物は対照群のレベルまで壁を使用する依存度を減らした(図3)。ラットとマウスの両方は彼らの周辺を嗅いで探検するために後ろ足で立つ、すなわち直立する。ラットは遊んだり攻撃ボクシングをするために直立する。

“遊びの家の中の動物は行動力が強く脳細胞の損失が少なかった。我々は薬物治療なしでこの病気の発生を遅らせ、進行を遅らせ、そして行動欠陥を逆転させる可能性を観察している。”とDr Meshulは言った。

これよりも以前の試験はパーキンソン病を誘発する神経毒であるMPTPで処置したマウスの中で、エンリッチされた環境で飼育されたマウスはドパミン神経細胞を40%消失したが、標準ケージで飼育したマウスはドパミン神経細胞を75%消失した。

この効果はどのぐらいの間続くのか?別の神経伝達系が不毛な環境においても引き継がれているのだろうか?その効果は玩具によるものか、あるいはダイナミックなケージにおける単に動物の数によるものだろうか?Dr Meshulはこの疑問を追求する計画であるが、ケージ内の動物数の初期の試験-10対2-は集団飼育は物理的にエンリッチされた環境よりも強力な神経保護作用を持っていた。

 

図2.Charlie Meshul と研究アシスタントのNatalie Goldbergの二人はVeterans Hospital とOregon Health and Science Universityにおいてエンリッチされた環境がパーキンソン病を発症させた動物に及ぼす影響をテストした。

 

 

 

 

 

図3.パーキンソン病にかかった動物は後ろ足で立つときの75%もシリンダー壁を使用するが健康な動物はその時間の一般的に約50%に壁を使用する。回復中の動物は対照群のレベルまで壁を使用する依存度を減らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

基本に戻る

Ron Frostigの実験室は自然に近い環境を持っている-生まれつきの行動を表現することを促進する自然に近くエンリッチされた環境であり、これはケージでは見られないものであり、あるいは研究者たちが古典的なエンリッチされた環境として言及しているものにおいてさえ見られないものである。

カリフォルニア大学神経生物学行動研究学部(Department of Neurobiology and Behaviour)の神経生理学教授Dr Frostigは“それは意義がある。我々は人の疾患モデルを使い、男または女をやっと歩ける余地がありで食べて飲む以外に何もすることがない不毛で無菌のスペースに閉じこめて試験をするだろうか?あなたはその研究結果を正常で健康な脳のモデルとして信頼するだろうか?そして、あなたは数人があの同じスペースに閉じこめられていた研究の考えられる効用についてなんと言うだろうか?“と言った。

これはもちろん昔からある疑問である。どのようなタイプの動物モデルがヒトの状態と病気の最適なモデルとして役立つか?答えは:言うのは難しい。もちろん、もし我々が兄弟試験を同時に走らすとする-1つの兄弟を無菌ケージ内で、もう一つをエンリッチされたケージ内で、そして一つは野生の中で-我々は動物モデルの信憑性については十分に知っている。それにもかかわらず、バイオメディカル研究はきわめて重要なので完全には信頼していない。したがって、折衷案は動物に予算とスペースが許す範囲まで生まれつきの行動を表現させることである。なぜならば、動物が生まれつきの行動をとれなくなると動物は不安になりストレスを受け、そして逆上して、それでなくてもせいぜい結果が疑わしくなるからである。

“それは本当である。エンリッチした環境は新しいセットの重要な問題を提起する。苦痛のない環境にどれほどの期間いればいいのか?生まれつきの行動の階層とは何か、そして我々はどれを常に提供しなければならないか?どれだけのエンリッチメントがあれば十分か(たとえば広いケージに数個の玩具で十分か)?そして、これらすべての疑問に対する答えは種を通じて一貫しているか?

これらの考えを考慮に入れて、我々は成ラットが自分自身を基本に行動させる住環境を創り出そうと着手した。我々はそれを自然なものとして言及してきた。なぜならば、それは野生のいくつかの特徴を実際に取り入れているからである。そして、とくに、我々はトンネルを掘る、餌をあさる、および激しく自然にひげを使用することも促進するような限りない社会的相互作用のような、生まれつきの行動を可能にする特徴を含めた。これは我々が研究している触覚システムである。

“その住環境は直径が2mで高さが1mのタンクである。ラットは地下のトンネルの中の暗いところに住んでいるナイト・ハンターであるので、我々はその住環境をパックした滅菌表土で満たした。このようにラットは掘ったり、隠れたり、探検したりそして遊んだりすることができる(図4)。

“我々は各種の触覚刺激物(たとえば生地の異なる粘着テープ、トンネル内に空間パターンの異なる穴、尖った金属ボルト)をラットがトンネルを通り抜けやすいように髭がさわりやすい位置に置いた。我々は自分の思うままに作り直せるようにモジュラータイプのパイプ構造を用いた。

“そのエンリッチメントを変化させるために、我々はわずか数個のトンネル終端に餌と飲水を置き、その位置を毎日変えた。さらに、我々は毎週1回、地下トンネルシステム全体を解体し、クリーンにし、そして新しい構成に組み替えた。

“我々の試験は標準ケージから自然に近い住環境に移された成雄ラットにおける大脳皮質の可塑性に関するものであった。標準ケージとは小

さくてプラスチック製であり滅菌された環境であり、そこでは生まれつきの行動を最後まで演じる舞台があってもほとんどないところである。我々は同じ成ラットにおいて自然に近い住環境に28日間移した前後において同じ大脳皮質におけるヒゲに対する再現の機能イメージングとニューロン活動の記録を用いた。然に近い住環境への移動は移動前のベースラインと比べて、また同じ期間標準ケーに置かれたままでその再現に変化を示さなかったラットにおけるヒゲに対する再現と比較して、体性感覚皮質の大規模な可塑性を引き起こした。さらに、我々は標準ケージの対照と比べて自然に近い住環境に移すことによって引き起こされる大脳基底分子可塑性を試験した。我々は自然に近い住環境にわずか2日間でも体性感覚における有意の変化を起こし、その変化はラットをそれぞれ7日および28日間移したときさらに大きくなったことを観察した。

“私は時々夜に出かけてその自然に近い住環境の近くに立ってそれを赤色ライトで照らします。動物は赤色ライトは見えません。そして私はあなたにお伝えすることができる。動物たちはトンネルから出入りし、お互いに相互作用することを止めない。もし私が彼らの行動をヒトの言葉で翻訳するように言われるとするならば、私は彼らはエネルギッシュで、遊び好きで、そして好奇心が強いが、彼らが何を経験しようとも、学習、記憶、および適応性という点からそれは明らかにポジティブである。幸い、私は以下のように結論づけた。すなわち、このタイプのエンリッチメントは動物の脳を脳が自然環境で機能するように機能させること、そして、もしかすると動物モデルをよりヒトに関連づけられた。

 

図4.ラットは地下のトンネルの中の暗いところに住んでいるナイト・ハンターであるので、我々はその住環境をパックした滅菌表土で満たした。このようにラットは掘ったり、隠れたり、探検したりそして遊んだりすることができる。

 

 

 

結論

試験の中には、それらは遠く離れて行われているものであるが、実験動物のために実験室内の住環境を完全に苦痛のないものにすることによって我々が受けるベネフィットの程度に関する我々の考えを拡張しようとしているものがある。我々はここに簡潔に抜粋してみたい。

チンパンジーにシロアリの塚を与えると、探餌と社会的相互作用が促進される。エンリッチした環境に収容されたマウスは癌の発育が遅くなり緩解した。マウスは手術後に集団で飼育すると単飼あるいは隣のマウスにアクセスできるよりもベネフィットが大きかった。遊びが重要であることは4,000年前に確立されており、そして科学者たちは太古から続く体内時計がすべての生き物を時間どおりに維持することを確認している。セレナーデと青色フィルターに暴露すると、不毛で構造化されていないケージ内における影響をある程度減弱させた。環境エンリッチメントは聴覚皮質ニューロンの反応力、閾値、選択度、および潜伏期を改善した。肉食動物の臭いと過密飼育したマウスの臭いの双方がハツカネズミの性周期に影響を及ぼした。

したがって、今は水準が上がっている。環境エンリッチメントはベースラインであって、贅沢なものではない。なお、多くの研究者は住環境は探検、探餌、運動、遊び、巣作りおよび交際のための機会を含めなければならないと提案しているが、他の研究者は大きな社会集団の中にいることはこれらすべての機会をまとめたよりも強力であるということを支持している。したがって、会話は続いているが、ボトムラインはこれである:研究は実験室内住環境が自然な世界を刺激すればするほど、動物がエンジョイする生活はますます自然になり、信頼できる結果を得るあなたの潜在力はますます末頼もしいものになる。

 

参考文献
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Van Loo, Pascalle, Nynke Kuin, LP, et al. (2007). Impact of 'living apart together' on postoperative recovery of mice compared with social and individual housing. Laboratory Animals. 41, 441-455.
Vera Baumans, a veterinarian, holds a PhD in Veterinary Anatomy. For six years she was Chair, Laboratory Animal Science at Karolinska Institutet in Stockholm, Sweden and retired as Animal Welfare Officer at Utrecht University, The Netherlands. Vera is a founding member of the Veterinary European College of Laboratory Animal Medicine and recipient of the Felix-Wankel-Animal Welfare Research prize 2011.
Helen Kelly is a freelance writer covering management science, biomedical science and the management of science internationally. She divides her time between Boston, Massachusetts USA and London UK.

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