○吾郷 昭夫、武智 眞由美、川上 浩平、竹内 崇師、権田 辰夫
島根大学 総合科学研究支援センター 実験動物分野
【目的】本研究は環境エンリッチメントとして市販されている回転盤付イグルーを用いて、マウスの成長と健全育成に対する効果を検証する。
【材料と方法】回転盤付イグルー((株)アニメック)は琉拍色で樹脂製のエンリッチメントで、イグルーは直径11cmのドーム型で、3ケ所に3cm巾の出入口がある。回転盤は直径15cmの円盤状で、イグルーの上に取付け、マウスが盤に乗って走っても滑らない構造になっている。5週令のICRマウスを回転盤付イグルーを入れて飼育した群(回転群)と、何も入れない対照群に分け、1匹飼育で各群16匹用いた。週1回、体重、摂餌量、摂水量の測定を行った。各群6例について、実験開始後1日日、1週目、2週日、3週日及び4週日にビデオによる行動観察を24時間行った。行動観察は主に睡眠時間とその他の行動時間を計測し、回転群については回転盤上での走行時間及び走行速度を計測した。回転盤の直径から走行距離を求めた。実験期間は4週間とし、主要臓器重量の測定及び血液生化学検査を行つた。実験室の照明時間は午前7時から午後7時までの12時間とし、暗期でのビデオ撮影には赤色灯をつけた。
【結果】摂餌量、摂水量とも1週日は回転群の摂取量が有意に少ない値を示したが、2週目以降は両群に差は見られなかった。体重は1週目以降、回転群がやや低い値を示し、
4週日では有意差が見られた。明期では80-90%が睡眠で、両群に差は見られなかった。暗期の睡眠時間は対照群が20-30%に対し、回転群は30-40%を示し、全ての観察時で多い値を示した。回転群の走行時間、走行速度及び走行距離は時間の経過と共に上昇した。走行はほとんどが暗期で見られ、一晩の走行時間と距離は1週目で約90分(3.5km)、4週目で約140分(7km)走り、一晩で約12kmも走るマウスも見られた。血液生化学検査は両群に差は見られなかった。臓器重量は回転群の心臓は有意に重く、腎臓は有意に軽い値を示した。腎臓周囲の脂肪重量は回転群がやや少ない値を示した。
【考察】回転盤付エンリッチメントはマウスの自発運動の欲求を満足させ、肥満を抑制するが、若令期のマウスにはやや負荷が大きすぎるかもしれない。