ドーム型エンリッチメントの色の違いによるマウスの居住嗜好性
吾郷昭夫、川上浩平、竹内崇師、権田辰夫(島根医大・動物施設)
第 37 回日本実験動物技術者協会総会 講演要旨集より
[目的]
近年動物福祉の立場から、実験動物にも“幸福な暮らし”を実現するための様々な試みがされている、そこで今回、マウスの環境エンリッチメント(EE)として市販されているドーム型
EE について、色の違いによるマウスの居住嗜好性を検討したので報告する。
[材料と方法]
動物は ICR/Jcl ♂ 10~13 週齢、10 匹を使用した。ドーム型 EE ((株)アニメック)は樹脂製で、直径
11 cm の半球形で、3カ所に 3 cm 幅の出入口がある。実験に使用した EE はA)透明、B)黄色、C)赤色、D)黒色の4種類を使用した。実験法方は金網製スノコを敷いた中央ケージの周りに床敷(テックフレッシュ、エデストロムジャパン)を入れた4個のケージを連結し、それぞれに
A、B、C、D の EE を入れた。室内照明は 8:00~20:00 の 12 時間で暗期には赤色灯を点けた。ドーム内照度(明期)は
A: 560、B: 380、C: 100、D: 20 Lx であった。午前 10 時にマウスを中央ケージに離し、48 時間の行動をビデオに収録し観察した。特にどの
EE を睡眠場所に選ぶかを観察した。
[結果と考察]
中央ケージに放されたマウスは探索行動を繰り返し、もっとも居住性の良い場所を探し、5時間 10
分後に最初の睡眠に入った。1日目の睡眠時間は 9 時間 23 分(明期 54%、暗期 46 %)で2日目は 11 時間
34 分(明期 70 %、暗期 30 %)であった。睡眠回数は1日7回、1回に 90 分から 120 分の睡眠をとった。
マウスが睡眠場所として最初に選んだ EE は A: 0 匹、B: 1 匹、C: 7 匹、D:
2 匹であった。EE 内の照度と赤色がマウスをリラックスさせることが示唆された。